限界突破


 溶液をいくら周りを高い温度で加熱しても、溶媒の沸点以上の温度に達することはありません。そのような時に役に立つのがネジ口試験管です。簡便に封管加熱することができるの、利用している研究室も多いのではないでしょうか。

 ある学生が反応を仕込もうとしていた。ネジ口試験管を用いたとしても、溶媒にアセトニトリルを用いて180度に加熱というのは、大丈夫かと思われたが、本人はこれまで何回か経験があったので、自信を持っていた。そこで今回は、少しスケールを上げて実験をすることにした。普段使用している量の2倍の量を仕込んだ。それに伴って溶媒の量も2倍になった。ドラフトチャンバー内の油浴を用いて加熱を始めたところ、暫くすると安定したように見えたので、休憩のために実験室を離れた。
 30分ほど経った頃、実験室にいた他の学生が駆け込んできて、「ドラフトの中がえらいことになってます」と学生に伝えた。慌てて実験室に戻ると、ドラフトの中の壁や天井は茶色く染まり、油浴の油がこぼれ、ドラフト内だけでなくその前の床も油まみれになっていた。そして、クランプには試験管の胴体はそのままで、蓋には大きな穴が空いていた。学生は研究室の学生に助けを求めて、総がかりで掃除をしたのであった。翌朝、学生が皆に感謝の言葉を伝えたのは言うまでもない。

ネジ口試験管にも蓋が凸型になっているものや凹型になっているものもあります。今回は凹型のものを用いたのですが、溶媒量を増やして180度という高温で加熱したので、蓋の接着部位が耐えられなくなって抜けたと思われます。丈夫な器具でも限界がありますので、過大な負荷をかけるのは避けなければなりません。そのような場合は、専用の器具がありますので、それを用いて実験するべきでしょうね。