右ねじの法則


 何事も1つの規則に従っているのは楽なのですが、中には例外規定のようなものがあり、それを知らなければとんでもないことになります。

 ある学生がヘリウムを使って実験をしようとしていた。しかし、ボンベに装着してある圧力調整器を見ると、ほとんど空になっていた。そこで、新しいボンベと取り替えることにした。学生は圧力調整器のねじを左に回そうとしたが、ねじが緩む気配が全く感じられない。「もしかしたらねじ山がつぶれてるんかも」と思い、渾身の力を込めて、しかも体重までかけてみたが、ねじは一向に回らなかった。
 ひとしきり力を出し切って疲れた学生が一息ついていると、そばを先生が通りかかった。「おっ、今から調整器を付け替えるんか。ヘリウムのボンベは逆ねじやから、反対に回さんように気いつけや」と言って去って行った。学生は、その時になってようやく自分の失敗に気づいた。調整器のねじを反対に回してみると、あっさりとはずれ、ボンベの交換もできた。しかし、圧力調整器はボンベのガスの圧力に対しては耐えられるように作ってあっても、人間の体重がかかることまでは想定して作られていなかった。案の定、調整器には隙間ができてしまっており、そこからはガスが漏れ続け、数日後には新しく交換したボンベも空になってしまっていた。結局、調整器とボンベの両方を新たに購入しなければならなくなり、先生にこっぴどく怒られたのは言うまでもない。

この場合は、気体の漏れだけで済みましたが、もし噴き出すようになりますと、ボンベの中はすごい高圧ですので大事故に繋がりかねません。無理をする前に、誰かに確認するくらいの心の余裕が欲しいものですね。