在庫一掃


 実験では色々な分析装置を使いますが、その1つにガスクロマトグラフィー(略してガスクロ)があります。試料を加熱して気化させるということがデメリットになることがありますが、それが問題なければ、混合物中に何成分あるか、どれ位存在しているか、などを知ることができますので有用です。

 ある学生は化合物を単離したものの、NMRのシグナルが重なっていて、完全に精製することができたかどうかの自信を持つことができなかった。そこで、先輩に相談したところ、「ガスクロが便利やで」とアドバイスをもらった。先輩に使い方を教えてもらい、試料も準備した。先輩は普段、インジェクション温度やカラムの温度を低めに設定していたが、学生の化合物は分子量も大きく、少し高めに設定することにした。「ピークが出たとしてもせいぜい2本くらい」と思うて分析を始めたところ、34本ものピークが林立していて、思わず「なんでや!」と叫んでしまった。再度、先輩に相談したところ、「もういっぺん同じ条件で分析してみ」との言。半信半疑で試料をもう一度注入すると、今度は目的物のピークと小さな副生成物のピークを観察することができた。

ガスクロでは注入した試料が全て検出器まで到達できる訳ではなく、カラムの中に留まっていることがあります。このガスクロを普段使用している先輩は低温に設定していたために、その残骸がカラムの中に多く残っていたのだと思われます。それを高温にしたために、一掃されたのでしょう。検量線を引いて定量しているから問題ないと思っていても、たまには温度を上げて、カラムに残っている在庫一掃処分をした方が良いですね。