思考の穴


 最近は学生実験でもスリ合わせの器具が普通に使われるようになりましたが、学生実験にそこまで予算を回すことができないところは、ゴム栓を使って実験器具を組み立てています。

 ある学生実験で、吸引ろ過をすることになった。ろ過鍾と漏斗の間にはゴム栓を用いて、密着させなければならない。しかし、学生たちはコルクボーラーで穴を開けることが苦手であり、嫌いである。使用済みのゴム栓が保管してあるところから、適したサイズの穴あきゴム栓を探して持ってくるのが手っ取り早い。ある学生は、鞄の中から必要なものを取り出すのに手間取って、先生の「実験を始めて下さい」という声にすぐに反応することができなかった。ふと振り返ると、実験室の後ろでは、数名の学生が穴あきゴム栓を探していた。学生は「しもた、出遅れた!」と思い、慌てて参入したが、すでに適当なゴム栓は取り尽くされた後であった。
 「しゃあないからボーラーで穴を開けるか」と思ったところに、探していたサイズのゴム栓が視界の隅に入った。学生はその幸運を喜んで、持ち帰ったゴム栓を用いて吸引ろ過を始めた。しかし、ろ過の速度は一向に上がらず、時間だけが過ぎていくのみであった。通りかかった先生に尋ねてみると「穴が2つ開いてるゴム栓を使うてるからや。面倒臭がらずに穴を開けえよ」と言われた。学生は、他の班からさらに遅れることを噛み締めながら、ゴム栓とコルクボーラーを取りに行ったのであった。

ここにある例のように、サイズさえ合えば良いという訳ではありません。どのような用途に使うのかをよく考えて行動するべきですね。