Eco vs. Ego


 エコロジーという言葉が日常生活で使われてから、随分になります。当たり前になり過ぎて、最近ではむしろ耳にしなくなってきた程です。環境に配慮することは当然重要なのですが、それを自己満足でしていることが多い場合もあります。

 ある学生はできるだけ無駄遣いをしないように心掛けていた。普段の生活から実践していることもあるが、研究活動をする際にも、環境に配慮したいと思っていたからである。その1つに実験用手袋があった。1回使ってすぐに捨てる人を見ていると「勿体ない」と思ってしまう。なので、学生は何回か使ってから捨てるようにしていた。ある日、隣の実験台の学生が「最近、なんか手が痒いんです」という話をしていた。その話を聞いて、他にも2、3名の学生にも同様の症状が現れていることが判明した。先生は、「これは原因を究明しないといけない」と思い、各学生が使用している試薬を思い浮かべていると、1つ思い当たる試薬があった。そのことを学生に伝えると、「私は手袋をして使っているんで、そんな症状は出てないです」との返事であった。先生は「そっか」と言うて引き下がったものの、納得はしていなかった。
 しばらく学生が実験している様子を眺めていたところ、学生は試薬を使う時には、確かに手袋をしていた。しかし、その手袋を外して実験台の片隅に置いた後、実験室から出て行き、戻ってくると、先ほどの手袋をはめて実験を再開していた。そして、実験室に居る間中、その手袋をし続けていた。それをみた先生が説教を始めたのは言うまでもない。

試薬が手に付かないように手袋をはめるのは、問題ありません。しかし、試薬が付いた手袋をしたまま、あちこち触っていますと、他の場所が汚染されて、周りの人たちに被害が出てしまいます。本人的には長時間手袋を使用して満足なのでしょうが、そのために他の人に迷惑をかけてはいけませんよね。