重圧からの解放


 普段、私たちは色々なプレッシャーを感じながら生活をしていますが、そのプレッシャーがなくなった時、得も言われぬ解放感に浸ることができます。

 ある学生が反応を終えた後の処理をしようとしていた。バイトに行く時間も迫っていることから、とりあえず濃縮までしておいて、明日の朝に続きの処理をすることにした。そこで、できるだけ早く終わらせるために、エバポレーターの水浴の温度を高めにセットして、加熱を始めた。そして、反応の終了時間になると同時に、フラスコをエバポレーターに取り付けて回転させた。減圧度も上げて速く濃縮できるようにした。その時、ボコッという音とともに、フラスコの中の溶液が突沸を起こした。
 結局、その日に行なった実験は無駄になり、汚したエバポレーターの掃除もしなければならず、バイト先に「今日は休みます」と電話をしなければならなかったのであった。翌朝、学生が同じ反応を仕込んだのは言うまでもない。

減圧蒸留にも共通することですが、目標の減圧度まで到達させてから、加熱をしなければなりません。今回の場合、先に加熱してから減圧をしたために、沸騰に必要な減圧度に達した途端、突沸したのです。溶媒にとっては、プレッシャーがなくなり、解放感に浸りながら飛び出したのかもしれませんが、実験している側からすると、歓迎できるものではありませんよね。