ジャンプアップ


 実験には辛抱強さと慎重さが要求される場合が多々あります。ビュレットを用いた滴定実験もその1つではないでしょうか。

 ある学生が、分析化学の学生実験で中和滴定を行なっていた。ビュレットを用いてアルカリ水溶液を少しずつ滴下しては、pH メ-タ-で測定するというお馴染みの操作である。実験の経験が浅い学生は、慎重に少し加えては測るという作業を繰り返していたが、pHの値がほとんど変化しないことに少しずつ苛立ちを覚え始めた。
 そこで、思い切って10 mL のアルカリ溶液を加えてみたところ、やはり変化が認められなかった。「こんなに感度が低いんやったら、もっとようけ入れてもええんちゃうん」と思い、さらに10 mL を加えた。ところが、今度はpH 値がはね上がり、中和点など一気に通り過ぎてしまったのであった。 学生は、実験を最初からやり直すべきかどうかを考えた。答えはもちろん、「こんな面倒なのは嫌」であった。そこで、大きく間のあいた点と点の間に、点を付け加えて、指導している先生に見せた。先生からは「きれいな曲線が描けてんな」と褒められたのであった。

学生実験の場合、実験のやり方に慣れる段階の授業ですので、結果の善し悪しはあまり問われませんが、当然のことながらデータの捏造は許されることではありません。まあ、こういうことを通じて、要領の良さを身に付けていくのかもしれませんけれど。