でんわ急げ


 最近は、スマートフォンがかなり優秀で、多くのことを代わりにやってくれるようになりました。生活必需品と言っても過言ではなく、学生たちも常に肌身離さず持っています。

 ある先生が教授会に出席していた。会の途中で、事務職員が傍にやって来て、「学生さんが用事やと言うてます」と呼び出された。会議室の入り口を出ると、学生が立っていたので事情を訊いた。学生は「実験室で試薬が噴き出して、目も開けてられへんくらいになってます」と答えた。先生は「これは緊急事態やんか!」と思い、急いで研究室に戻った。戻る途中で学生に一通り、事故の様子を説明してもらった後、「なんで、携帯で電話をせんと、会議室まで走って来たん?」と尋ねると、「そこまで頭が回りませんでした」とのこと。「普段からあんだけ携帯をいじくり倒してるくせに」などと会話をしている内に、研究室に到着した。
 実験室で噴き上げた試薬は少し催涙性であったこともあり、学生たちは全員廊下に避難していた。先生は我慢して実験室に入り、窓を開けて換気を確保した後、ヒーターの電源を切り、廊下に出た。そして、一息ついてから、後片付けをしたのであった。

携帯電話はこのような非常時にこそ役立ちそうなものなのですが、肝心の使う人がパニックになってしまっていては、何の役にも立たないものですね。