将棋は逆転のゲームと言われますが、優勢に進めていて相手の王将を追い詰めていても、最後に詰める段階で緩めてしまうと、一気に逆転されてしまう怖さがあります。
ある学生がカラムクロマトグラフィーにより、反応混合物を分離していた。Rf値が極めて近いスポットが現れていたが、丁寧に分けた結果、それらを完全に分離することに成功した。それが嬉しくて、TLCを他の人に見せながら自慢もしていた。
意気揚々と濃縮する段階に移った。濃縮するべきフラクションの量は多くもなく、少なくもなくというところで、ぎりぎり1回の濃縮で済ますことができるように思えた。そこで、7分目位まで入れたナス型フラスコをエバポレーターに取り付け、濃縮を始めた。冷却管のところから溶媒が滴り落ち始め、順調に濃縮が始まったかに見えた。その瞬間、突沸が起こりフラスコの内容物のほとんどが受器の方に飛んで行った。学生はカラム処理がうまく行っていただけに、悔しさも倍増したのであった。
突沸を防ぐために沸石を入れますが、濃縮する際にはそれができませんので、フラスコを回転させています。濃縮の速度は液面の面積に比例しますので、沢山の液を入れたフラスコを傾けると、むしろ液面の面積が小さくなってしまいます。半分程度に留めておいて、液量が減ったら追加して2回に分けて濃縮するべきでしたね。