Step-by-Step


 研究を進める上で、文献検索は不可欠です。構造検索は異なった名前を付けていても漏れがありませんので非常に有用ですが、構造検索でも難しい検索があります。

 ある学生がある骨格の全ての位置に異なったアリール基を導入する合成手法を開発した。「これって凄いやろ」と感覚的には思うものの、他の人に納得してもらうには、これまでにそのような合成例がないか、あったとしても特殊な方法でしかされていないことを示す必要がある。しかし、一致する構造を調べるのは容易であるが、このような検索はどのようにしたら良いのかが分からなかった。そこで、先輩に尋ねたところ、全ての場所にベンゼン環を付けた上でその類似検索をして、シラミ潰しに調べていくしかないやろと言われた。学生がその検索をしたところ、1万2千個の化合物がヒットした。学生はその数に躊躇したが、順番に見ていくことにした。
 同じ置換基が付いていると除外できるので一目で識別できるものも多く、思ったよりも早いペースで進んでいった。ブラウザの1ページに100個ずつ化合物が表示されるので120ページあったが、慣れてくるに従って、なんとかなりそうな気がした。途中でいくつか該当する化合物もあったが、その場で文献を調べることはせず、最後にまとめて文献情報を表示させることにした。ところが、80ページに達して、残り3分の1と思った瞬間、マウスを動かしても反応しなくなった。ブラウザがフリーズしてしまったのである。色々と試しても反応しないので、結局ブラウザを強制終了することにした。当然のことながらそこまでチェックしていた化合物の情報も失われており、また最初からやり直すことになった。失われた分も含めて合計2万個の化合物をチェックしなければならなくなった。学生は同じ失敗をしないように、千個毎に文献情報をダウンロードするようにしたのであった。

パソコンで作業していても、保存していないがために、それまで作成していた文書が失われるということがあります。こまめに刻みながら仕事をするべきですね。