ガード


 ガラス器具は丁寧に扱っていても、割れることがよくあります。少し欠けた程度で捨ててしまうのは勿体ないので、欠けた部分をバーナーであぶって丸めてから使います。しかし、それを怠ると、怪我の元にもなってしまいます。

 ある学生が含ハロゲン化合物の精製をするために、蒸留装置を組み立てていた。ふと、手を見ると、指から血が流れていた。欠けた器具で、知らないうちに切ってしまったようである。大した傷でもないので、絆創膏を巻いて、そのまま実験を続けた。
 実験も終わり、流し台で手を洗ったが、水が染み込んだ絆創膏がなかなか乾かず、気持ち悪かった。そこで、取り換えようと絆創膏をはがしてみると、そこには絆創膏をしていた部分が真っ黒に変色した指があった。まるで、昔の罪人の腕の入れ墨か、柔道の黒帯のような感じである。ハロゲン化合物の蒸気が絆創膏に染み込んだまま、皮膚にずっと接触していたので薬品火傷のようになっていたのであった。それまでにも何回かは手を洗っていたものの、絆創膏は傷口をガードしているだけでなく、皮膚に付いた薬品が洗い落とされるのもガードして守っていたのであった。それ以来、その学生は絆創膏を使うのが怖くなり、液体絆創膏を使うようになったのであった。

薬品が皮膚に付いたら、すぐに水で洗い落とすのが基本です。ずっと皮膚に触れたままになっていると、皮膚の表面で化学反応が進行した状況が続きますので、十分に注意をしましょう。