見よう見まね


 研究室では色々な実験を行ないますが、大学院生はそれらを淡々とこなしています。しかし、研究室に入りたての4回生にとっては、それらはいずれも未知の世界です。

 ある学生が先生からTLC (薄層クロマトグラフィ-)で反応混合物のチェックを行なうように言われたものの、やり方が全くわからなかった。しかし、忙しそうにしている先輩の手を止めさせて教えてもらうなんてことは、研究室生活に慣れていない4回生には到底無理な話である。そこで、学生は先輩がTLCをしている様子を盗み見して、それを真似ることにした。それから数週間、その学生は何の問題もなくTLC をしていたかに見えた。ある日、先生がTLCをしている学生の横を通りかかった際、原点として担体に染み込ませたスポットが異常に大きいことに気がついた。よくよく見ると、学生はキャピラリで吸い上げているのではなく、ガラス棒の先に試料を付けていたのである。
 先生は改めてキャピラリでスポットを打つことを教えて去っていったが、残された学生はキャピラリの引き方を知らなかった。学生は仕方がないので、使用済みのキャピラリをガラス捨て場から拾ってきて使っていた。それを見かけた先生は、自分の至らなさに気付いたのであった。

新しい環境では、何もかもが初めてであり、分からないことだらけなのは当然です。恥ずかしいと思わずに、堂々と教えてもらうようにしましょう。但し、同じことを何度も尋ねるのは避けなければなりません。