看板に偽り有り


 試薬瓶に何が入っているのかは、見ただけではわかりません。ラベルが唯一の頼りになります。

 ある学生が、瓶に入っている重クロロホルムを最後まで使い切った。空き瓶は洗って捨てるのであるが、その前に一仕事と思い、回転子の洗浄用の瓶に使うにした。どうせ1回きりのことなので、ラベルは剥がさなかった。回転子を硝酸に浸け、しばらくドラフトに置いていた。
 同じ日、他の学生がNMRのサンプルを作ろうと思い、重クロロホルムの瓶を探し歩いていた。ふと、ドラフトを見ると、瓶が置いてあったので、「ちゃんと元の位置に戻しといてえや」と愚痴りながら、サンプリングを始めた。液の粘度は若干高く、褐色の煙が出たような気もしたが、細かいことは気にせずにNMRの測定を始めた。しかし、重水素のシグナルが見つからないために、磁場をロックすることができなかったのであった。

他の人の迷惑にならないように、ラベルを剥がすか、中身が違うということを明示するようにするべきですね。