初心者と初級者


 研究室に入りたての4回生が初心者ならば、M1の学生は少し実験に慣れた初級者というところでしょうか。

 ある4回生の学生が融点測定をしていた。初めてだったので、M1の先輩に融点測定器の使い方を教えてもらったが、単純な作業なので、失敗はしなさそうである。しかし、300度付近になっても一向に融ける気配がない。非極性の有機溶媒に簡単に溶けて、NMRでもシグナルが観察できたし、燃やしても灰が残らないので、無機塩でないことは確かである。学生は途方に暮れて先生に相談した。実際に融点測定をしている様子を見てもらった。
先生「これは何してんねん!融けるはずがないやろ!」
4回生「確かに発熱体の金属ブロックの上やなくて、保温用のガラス板の上に試料を載せて測れるんかなと思うてたんです。」
先生「誰がこんな間違えた方法を教えたんや?呼んでこい。」
のようなやり取りの後、M1の学生がやってきた。

M1「去年、先生がガラス板に載せろと教えてくれたもん」
先生「ちゃうわ!ガラス板を載せろと言うたんや。ひょっとして、去年一年間そうしてたんか?」
M1「うん、いつ測っても融けへんかったから、おかしいなとは思ってたんよ。」
  先生「去年測った分は全部やり直せ!」

後輩に教えるのは、自分がわかっていなかった部分を再確認できる機会でもあるので、積極的に教えるようにしましょう。でも、先輩といっても、まだまだ初心者に毛がはえたようなものです。間違えたことを言っているかもしれませんので、鵜呑みはやめた方がいいですね。