想定外


 普段の生活で身に付いている感覚というものがあります。しかし、それから外れたものに遭遇した時は、体が対応しないこともあります。

 ある日、研究室に保管している試薬の管理状況を、2名の事務の人が巡視していた。事務の人は化学が専門でないので、見るもの聞くものが初めてで興味津々であった。並んでいる試薬の中に水銀の瓶があったので、先生が「これを持ってみて下さい」と1人に手渡した。受け取った人は「わあ、結構重いですね」と言いながら、もう1人に手渡した。しかし、受け取った人が思っていた以上に水銀は重かった。想定していた重さ用に、込めていた力では支えきれず、落として割ってしまった。
 事務の人たちは、突然の出来事に驚いたものの、どう対処して良いのかもわからず、おろおろしていた。先生の「後の処理はこっちでやっときますんで」という優しい言葉に、事務の人たちは「すみません」と謝りながら去っていった。その後、先生が事務に出した要望が、以前より聞き入れられやすくなったと感じたのは、気のせいではないかもしれない。

実験室では想定外のことが起こることも、よくあります。想定の範囲を少し拡げておく必要がありますし、起こった時は落ち着いて対処することを心がけなければなりませんね。