証拠隠滅


 試薬を乾燥するデシケ-タ-の蓋は、横にスライドさせて開けます。しかし、長期間放っておいたりすると、くっついてしまって少々の力では開かなくなることが、よくあります。

 ある学生がデシケ-タ-を開けようとしたが、蓋がくっついてしまっていた。腕に思い切り力を込めたが、びくともしなかった。そこに通りかかった先生が、苦戦を強いられている学生を見て「蓋が少しずれてるところを壁に押し当てて、足で押せば開くで」と教えてくれた。学生は、その方法を早速試してみることにした。しかし、腕よりも力が強いはずの足で押しても、蓋はなかなか開く気配を見せない。そこで、学生はさらに足に力を込めたが、ガラスが耐えうる限度を超えてしまっていた。その途端、鈍い音を立てて蓋が割れてしまった。直径が40センチ位あり、値段が非常に高そうなものである。学生は割ったことを先生に言う勇気を持てず、誰も見ていなかったことをいいことに自分の実験台の下に隠してしまった。
 学生はその日の夜から、毎日割れたふたを少しずつ砕いてはガラス捨て場に捨てるということを繰り返し、1ヶ月ほどかけてデシケ-タ-の存在を研究室から無くしてしまったのであった。

器具を割った時は正直に報告して素直に謝っている方が、精神衛生上良いですね。むしろ、割ったことを黙っていた方が、さらに怒られますので。