密着


 実験室ではスリ合せのガラス器具をよく使います。ガラス器具同士を隙間なく接続することができ、非常に便利なものですが、その分、高価でもあります。

 ある学生が反応を終えたが、夜も遅かったので、翌朝に処理を行なうことにした。反応混合物が入ったナス型フラスコに玉栓をして、帰宅の途についた。翌朝、処理をしようと栓に手をかけたが、玉栓はびくともせず、フラスコと一体化したままである。どうしようもなくなった学生は、先輩に助けを求めた。
 先輩は「スリのところが汚れてるからくっついてるんやんか」と言いながら、受け取ったフラスコをお腹に固定して、栓の部分に力を込めた。少々堅かったが、栓がスコッと抜けた。しかし、その拍子にフラスコの中の液も飛び出した。後輩の反応混合物を少しこぼしてしまった申し訳ない気持ちと、自分の服のお腹の部分に茶色いしみができて情けない気持ちが合わさって、その日は1日暗い気持ちで過ごしたのであった。

スリ合わせ器具のスリが汚れますと、くっついてしまい外れにくくなることがよくあります。場合によっては、栓とフラスコの両方が使えなくなることにもなりかねません。フラスコに試薬を加える時は漏斗を使い、スリの部分が汚れたらこまめに拭き取らなければなりませんね。