塩結び


 最近の実験はスケールが小さくなっていますので、反応で試薬を仕込む際にもmL単位ではなく、μL単位で行なうことがほとんどです。その際に用いるのが、マイクロシリンジです。

 ある学生が反応を酸クロリドを仕込んだ後に、アミン類を続けてマイクロシリンジで仕込んだ。もちろん、違う試薬を吸い上げる時はもちろんのこと、使用後も十分に洗った(つもりであった)。しかし、翌日にもう一度使おうと思って手に取ったが、びくともしない。酸クロリドが加水分解して生じた塩化水素とアミンが塩を形成してシリンジを詰まらせてしまったのである。プランジャが抜けない以上、洗おうにも洗えない。ガラスの塊を手にしながら、どうしようもなくなった学生は廃ガラス捨て場に捨てたのであった。後日、それを見つけた先生に怒られたのは言うまでもない。

自分では十分に洗ったと思っても、汚れが残っていることがよくあります。十分ではなく、十二分に洗わなければなりませんね。器具を壊した時も、すぐに報告致しましょう。その時は十分怒られますが、報告しなかったら十二分に怒られますので。