スケールの小さな話


 研究の話を他のグループの人としていますと、スケールの違いから話が噛み合ないことがあります。もちろん、世間一般の常識的なスケールというものがあります。

 ある学生が学会で発表をしていた。質疑応答の時間になり、フロアから質問が出た。
「酸素雰囲気下で反応を行なっていますが、酸素加圧下ではされていませんでしょうか」
 それに対して、学生は自信を持って「すべて加圧下でやっています」と言い切った。
 それを聞いて会場後方の集団がざわつき始めた。同じ研究室の学生達である。
「あいつ、酸素加圧で実験やってたか?」
「いや、そんなん見たことないで」「嘘をついてるんちゃうか」などなど。
 発表を終えた学生を捕まえて、早速問いただしたところ、「酸素風船を付けてるんで、容器を開けた時に中から酸素が出てくるから加圧でしょ」との返事。一同は「厳密に言えばそうなんやけど・・・」と言いながら、世間一般の常識では、それを加圧とは言わないと説明したのであった。


研究者の常識を身に付けるには、多くの経験をすることが必要であり、時間がかかるものです。