プレーイングマネージャー


 卒論発表会の直前になりますと、学生はアクセル全開で実験をしなければなりません。しかし、それができないこともあります。

 ある学生は卒論発表会に向けて、毎日一生懸命実験をしていた。しかし、反応を仕込むたびにあることに悩まされていた。扱っている試薬との相性が悪く、実験が終わると手がグローブのように腫れ上がるのである。ひどくなるとかさぶたができて、皮が剥けたらさらに中が腫れてミットのようになってしまう。マスクをして、手袋を二重にはめて完全防備態勢で挑んでも、虚しく返り討ちにあってしまうのみである。しかし、学生はそのことを先生に報告していなかった。心配をかけたくなかったからである。
 その様子を見ていた先輩が見かねて、先生に知らせたが、卒論発表会まで1ヶ月を切っていた。今更、他のテーマに変えることもできないし、かといって学生に実験をさせる訳にもいかない。監督の立場として悩んだ末、出した結論は「代打、俺」。先生が学生の替わりに実験をして、そのデータを学生に渡して解析をさせるという最終手段を用いて、無事に乗り切ったのであった。

他の人にとっては全く問題のない試薬でも、相性が悪くアレルギーのような症状が出ることがあります。そのような場合は、隠すのではなく指導教員にしっかりと報告するようにしましょう。