憤懣やるかたない


 吸引ろ過は、ろ過の速度を高めるために受器の周辺を減圧にして行なうものです。ろ紙を通じて空気がろ過鐘に入ってきますが、減圧であることには違いがありません。

 ある学生が、終わったばかりの反応系を見たところ、生成物らしい固体が析出しているのが見えた。こんな時は、変に抽出などの操作をするよりも、まずはろ過である。いそいそと吸引ろ過の準備を行ない、反応混合物を漏斗に流し込んだ。
 ろ紙の上には固体が残り、ろ液は三角フラスコに吸い込まれ、順調に進んでいるかに見えた。その時、受器の中の三角フラスコが噴火をした火山のようにろ液を吐き出した。状況が把握できていない学生は、ろ過鐘の中に撒き散らされている呆然と眺めるのみであった。

吸引ろ過中の、ろ過鐘は減圧になっています。学生が反応溶媒として使っていたのはジエチルエーテルでしたので、ろ過鐘内の減圧度で気化をしていました。フラスコ内の液量が多くなるにつれて、液面の表面積が小さくなりますので、ある時点で、その均衡が破れて突沸が起こってしまったのです。単純な操作の実験であっても、溶媒が何であるかを考えなければなりませんね。