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 基本的な実験操作で最も慣れるまで時間がかかるのが、カラムクロマトグラフィーです。ただ、初心者の場合は、原理をわからずに行なっているために「慣れる」以前の問題であることも・・・。

 ある学生がナフタレン誘導体をカラムで単離しようとしていた。目的の化合物はTLCで見ても、Rf値が高く、他の不純物とは大きな差があることから、簡単に分離できるはずである。また、ベンゼン環が2つあるということもあり、UVをしっかり吸収することから、見逃す心配もない。
 カラムを開始してしばらくのこと。フラクションをTLCでチェックしていた学生が首をかしげていた。先輩が横から覗き込むと、そこには全面にUVの吸収があるTLCプレートがあった。先輩は「ナフタレンが溶出したフラクションを上から流したんとちゃうか」と言ったが、初心者の学生は何を言われているかわからず、そのままカラムを続けた。結局、長時間かけても目的の生成物は得られることなく終わり、「なんで失敗したんかがわからん」と言いながら帰ったのであった。

誰にでも初心者の時期はあります。自分なりに理解をし、分からないことは素直に尋ね、言われたことには素直に耳を傾けるという真摯な態度が必要ですね。