透き影


 カラムで混合物を分離では、単離したい化合物がカラム中にまだ残っているのかどうかは大きな問題にです。

 ある学生がカラム分離をしていた。カラムに色が着いていたので、溶媒の極性を上げる際も、タイミングが比較的簡単に分離できるケースであった。極性を上げていくにつれ、着色した帯が下りてきて溶出し、順調であった。しかし、上の方にある帯がなかなか下りてこない。学生はかなり高い極性を展開溶媒に用いてみたが、その帯は一向に動く気配がなかった。学生はこの時点でカラム処理を終了すべきかどうか迷った。しかし、この帯が「もし欲しい化合物であったら」と思うと、やめる勇気は持てなかった。
 そしてついに引き出しの中にある50 mLの三角フラスコを全て受器として使い切ってしまった。そこで、100 mLのフラスコを用いることにした。カラムと受器の位置を調整しようとクランプを緩めると、先ほどまで動かなかった帯が動き始めた。そして、クランプの影を見誤っていただけであることに気付いたのであった。

溶出した溶液を順に濃縮するなど、できるだけ処理を並行して行なえば、効率良く行なうことができます。その時にサンプリングした重量と濃縮して得られた化合物の重量を比べると、どの程度カラムの中に残っているのかが簡単に分かりますよね。