3D


 立体を眺める際、一方向からのみですと、全体像を見誤ることがあります。例えば、円形に見えたからといって、それが球形をしているとは限らず、円柱である可能性もあります。やはり物事は多面的に見る必要があります。

 ある学生が2段階の反応を行なっていた。1段階目の生成物は敢えて確認しなくても、できているであろうと思っていたし、実際に問題なく最終生成物も得られていた。ある日、先生から「論文を書くのに必要やから、1段階目の生成物のスペクトルデータを集めて」と言われた。そこで、1段階目の生成物を単離してNMRを測定したところ、そこには普段見慣れている2段階終了後のスペクトルが現れていた。もうすでにパニックである。サンプルを取り違えていないことなどを確認した上で、先生のところに相談に行った。
 話を聞いた先生はIRスペクトルを測定するように指示を出した。学生は「そんなん取ってもあんまり意味がないんちゃうか」と疑いながら測定したが、予想に反し、そこには1段階目の中間生成物のスペクトルがあった。そして、NMRの測定に溶媒として用いた重DMSOに溶解させた時点で、2段階目の反応がスムーズに進行していることを悟ったのであった。

NMRは分析に有力な機器ですが、そればかりに頼っていると、思わぬ落とし穴にはまることがあります。できるだけ多くの情報を得て判断するようにするべきですね。