噴水


 液体を口の大きな瓶から口の小さな瓶へ移すのは難しい作業です。そんな時に役に立つのが漏斗です。

 ある学生が反応に使っている試薬はとても臭かった。反応を仕込むたびに、周りからはブーイングが飛び交う。しかし、臭いに関してはお互い様である。むしろ周りの学生の不満は実験をしている学生に向けられていた。学生は、いつも500 mLの大きな瓶から試薬を量り取るので、よくこぼすのである。そして、そのこぼれた試薬の臭いが長時間残留していることが耐えられなかった。
 ある先輩が学生に対して、「小さい瓶に移し替えて、そこから使うたら、そんなにこぼさんでええんちゃうか」とアドバイスをした。それを聞いた学生も素直に従うことにした。小さな瓶の口に漏斗を突き立て、そこに試薬を入れていった。最初は順調であったが、そのうち、漏斗の管の部分が試薬で埋まり、広がっている部分まで溜まってきた。その瞬間、漏斗から噴水のように試薬が噴き出し、研究室の学生は全員、その臭いに耐えきれなくなって外に避難をしたのであった。

これは小さい瓶の口に漏斗が密着していたために起こった事故です。漏斗から液体がどんどん入ってくるのに、瓶の中で高くなった圧は抜ける場所がなかったために、漏斗の方に逆流したのです。瓶の口と漏斗の間に、少し隙間を空けていれば何も問題はなかったのですがね。