ひねり


 収率を上げる作業はなかなか大変なものです。実験操作や後処理の改善は勿論のこと、反応条件のファクターを種々検討しなければならないからです。人によっては、反応条件の検討そのものが研究テーマになっていることさえあります。

 ある学生は悩んでいた。半年以上、反応条件の最適化を検討し続けているにも拘らず、収率が一向に上がらないのである。反応温度、時間、試薬の添加順序などなど、思いつくことは全てやったが、結果は同じであった。ただ、諦めきれないのは、たまに良い結果が得られるので、どこかのファクターが効いていることは間違いないのであるが、それがわからない。先生とも相談してみたが、すでにやり尽くした感があるので、「何かもうひとひねりが必要なんやろなあ」と言われる始末。
 ある日、いつもより固体の析出が多く見られたので、撹拌速度を上げて反応を行なった。その結果、予想外に収率の向上が認められた。それは何回か繰り返しても、同様の結果が再現することができた。学生は、「ひとひねりというのは、スターラーのつまみをひねることやったんか」と悟ったのであった。

均一系の反応では、撹拌速度の影響をあまり受けませんが、不均一系では、かなり受けます。でも、慎重な学生は、つい穏やかに実験をしようとしますので、撹拌が十分にされていないこともあります。撹拌効率というものにも目を向けるべきですね。