オーバースペック


 実験器具や設備はその用途や目的に応じて要求されるスペック(性能)があります。スペックが高いに越したことはないのですが、高過ぎても、それを持て余してしまいます。

 ある学生が加熱をするためにオイルバスをセットしようとしていた。しかし、皆が使い古したオイルは粘性が増しており、ちゃんと熱が伝わってくれるのかどうかが不安に思えた。そこで、先輩に相談したところ、「それはオイルが古くなってしもうてるから、交換しといて」という返事であった。
 学生は古いオイルを捨てて、ボウルを拭き取ってきれいにした。次にオイルの入った缶を取り出し、新しいオイルをボウルに注いだ。サラサラ感は先ほどとは比べものにならず、うまく実験がいく予感がして、嬉しくなっていた。そこを通りかかった先輩が慌てて「それ、真空ポンプ用のオイルで高い方やで」と注ぐのを止めさせたがすでに遅し。ボウルの中にはオイルがたっぷりと入っていた。オイルがきれいになったのとは対照的に、学生の気分はどんよりと落ち込んでいったのであった。

加熱用の油を真空ポンプに入れなかったのが不幸中の幸いですが、加熱用に真空ポンプ用のオイルを使うのは少しもったいないですね。そのオイルを使ったら良い結果が得られるというのであれば、話は別ですけれども。初めて行なう作業では、一度先輩や先生に確認する癖をつけておいた方がいいですね。