有機合成の実験で抽出はよく行なう実験操作の1つです。分液漏斗を用いるものが一般的ですが、上部の玉栓と下部のコックはスリ合わせになっていますので、バラバラにならないようにタコ糸などで結びつけていることが多いかと思います。
ある学生が大きなスケールで実験をしていた。反応の後処理の段階で抽出するのであるが、水層の量が多いので1 Lの分液漏斗を用いた。有機溶媒を加えて振った後に二層を分離するという操作を3回繰り返して抽出作業を終えた。学生は使用済みの分液漏斗を洗おうと思い、流し台のところへ行き、水で洗い始めた。狭いシンクの中で洗うのであるから、蛇口とかにぶつけて割らないようにと注意して洗っていた。ただ、そちらに注意が向いた分、分液漏斗にぶら下がっている玉栓に向くべき注意がおろそかになっていた。分液漏斗にいくらかの水を入れて振りながら洗っていると、玉栓が跳ね上がり本体にぶつかった。「あっ」と思う間もなく、分液漏斗の横っ腹には大きな穴が開いてしまった。高価そうな分液漏斗を割った学生は、先生にどのように報告したら良いのかと立ちすくんでしまったのであった。
タコ糸でぶら下がっているものを振りながら洗うのはけん玉の玉をぶら下げて振り回しているようなものです。当然のことながら、ぶつかって割れる危険性が高いと言えます。そうはならないように玉栓も一緒に持って洗うなどの注意をするべきでしたね。