ワンパターン


 抽出とは、溶解性の違いを利用して、混合物の中から欲しいものを取り出す操作ですが、いくつかの方法があります。

 ある学生が反応混合物のNMRを見て悩んでいた。目的生成物が得られているものの、未反応の原料が残っているので、分離をしなければならない。しかしTLCを見ると、Rf値が近くて分離することが難しそうである。そこで、先生に相談したところ、「溶解性が全然違うから抽出で分けたらええやろ」というアドバイスをもらった。学生は反応混合物に水を入れて、有機溶媒も加えて分液漏斗を振ったものの、分離した有機溶媒を濃縮しても、生成物は全く得られなかった。
 そのことを先生のところに報告に行くと、「この生成物は水溶性が高いのに、なんで水を入れたん?」と言われた。その時になって学生は自分のやり方が間違っていたことを悟り、反応を最初からやり直したのであった。

抽出には分液漏斗を使用する液ー液抽出だけでなく、固体から溶解する成分を抽出する固ー液抽出、連抽管やソックスレーを用いた連続抽出など、色々な方法があり、その場の状況や目的に応じて使い分けをします。先生は反応混合物に直接有機溶媒を入れて抽出する方法を指示したつもりだったのでしょうが、この学生は分液漏斗を使う方法しか頭になく、分液を振るには分離する水層が必要だと思って水を加えたのでしょう。実験操作はワンパターンではなく、色々なパターンがあることを知っておくべきですね。