溶液を開放系で加熱しますと、いくら周りの温度を高くしても、溶媒の沸点以上の温度には達しません。それ以上加熱しても、溶媒が蒸発して減っていくだけです。沸点以上に加熱したい時は封管を用います。
ある学生が少々高い目の温度で反応を仕込もうとしていた。試薬と溶媒を入れたネジ口試験管の蓋をした後、油浴に浸けて150度で加熱した。溶媒の沸点が80度であったので、これだけの温度で加熱できるのは封管を用いて加熱したお陰である。所定の時間が過ぎたので、試験管を油浴から引き上げて放冷した。反応溶液の色も変化しており、目的の反応が進行している様子が窺え、学生はどのような結果が出るのか、ワクワクしながら待っていた。
試験管の温度が手で触ることができる程度にまで下がった。結果が待ち遠しい学生は「もうええやろ」と思って、蓋を開けた。その瞬間、シュポッという音とともに蓋がどこかに飛んでいった。手元を見ると、試験管は空っぽの状態であり、床には溶液が飛び散っていたのであった。
封管にして加熱しますと、温度だけでなく試験管内の圧力もかなり高くなっています。この学生は冷めたと思って蓋を開けたのですが、中の圧力がまだまだ高く、その影響で中身が飛び出したのだと思われます。不幸中の幸いであったのは、吹き出した先に誰も立っていなかったことでしょうか。十分に冷ましてから蓋を開けなければなりませんね。