黄金郷


 時代とともに使用する実験装置も少しずつ変わっていきます。最近は実験スケールが小さくなったので、メカニカルスターラーを使う機会が減ってきました。アルゴン雰囲気下などで用いる場合には撹拌シールが必要です。今はテフロン製が多く用いられていますが、かつては水銀シールが主流の時期もありました。

 ある研究室では、上の階の研究室が水道に水を流す度に天井から水が漏れ落ちてくるという事態に陥っていた。水道管も老朽化しているためだろうということで、排水管の交換をすることになった。それに伴い、多少の水が落ちてくるとのことで、下には新聞紙を敷き詰めた。業者の人がパイプを外そうと、ボルトを外した瞬間、ボトボトという重たい音を立てながら大量の水銀が降ってきた。
 撹拌シールで使われていた水銀が、何かの間違いで排水管の流れたものの、重たいし水の中では気化もせずに、長年留まっていたのだろうとの結論になった。そ連絡を受けて上の階から慌てて降りてきた教員も、水銀を使っていない世代だったので、「身に覚えのないこと」ではあるものの、下の階の研究室に迷惑を掛けたことは事実なので、謝罪をするとともに研究室の学生を呼んで掃除をしたのであった。

建物が古いということは、それだけの歴史があるということです。床板をめくったら、そこには水銀溜まりがあったという事例もあります。試料とかデータの遺産は良いのですが、このような負の遺産は残してもらいたくはないものですね。