我の振り見て我が振り直せ


 このホームページもそうですが、他の人の失敗等を見て「自分は同じ過ちをせんようにしよう」というのは一般的です。大学の先生も学生の時があった訳ですから、当然色々な失敗をしているはずです。なので、遠い昔の自らの失敗を糧に学生を指導していることが多いように思います。

 ある学生が学生実験で中和をしていた。少しずつ酸を加えてpH試験紙で確認するという作業である。各班に配布されたpH試験紙のロールから、少しずつ引っ張り出してハサミで切っていたが、少しずつ面倒になり、ハサミを使わずに手でちぎり始めた。きれいな手で触っている訳ではないので、手に触れたところが変色した部分も見られ、学生はそれを避けるために、ロールから少しずつ引っ張り出す量を増やしていった。同じような現象は他の班でも見られるようになってきた。そして、ピンセットで紙をつまんで液に浸けるという操作自体も面倒になった学生は、1回のpHを調べるために5 cm位引っ張り出して、手で持って調べるようになった。まさにトイレットペーパー感覚である。先生も「高いんやからちょっとずつ使えよ」と言いながら実験室内を歩いていたが、暴徒と化した学生を止めることはできず、エスカレートしていく一方であった。
 学生実験が終わった後の実験室のゴミ箱には、空になったpH試験紙の容器と一部しか変色していない黄緑色の長い帯が散乱していた。それらを悲しそうな顔で片付けてる先生の顔を見て、学生たちは「ちょっとやり過ぎたな」と反省したが後の祭り。それから数年経ったある日、かつて学生実験で暴走していた学生も、大学で学生を指導する立場になっていた。学生実験でpH試験紙を使わせる時には、試験紙のロールを学生に預けるなどと無謀なことはせず、実験が始まる前に5 mm程度の幅になるようにハサミで切った試験紙が入ったサンプル瓶を各班に配っていたのであった。

公共のものや共用しているものを「どうせ自分のもんやないし」という感覚で使用する人がいます。必要なものを必要なだけ使用するように心がえるべきですよね。