きたい外れ


 反応する時は溶媒を用いることが多いですが、使われるのは有機溶媒や水がほとんどです。しかし、たまに変わり種の溶媒を用いることもあります。

 ある学生が文献を片手に反応を仕込もうとしていた。基質は溶解性が低いものの、酸性官能基を持っていることから、熱アンモニア水には溶解するとのことであった。学生は「けったいなもんを使うんやな」と思いつつも、アンモニア水に基質となる化合物を加えた。しかし、一部が溶けただけで、固体の多くは溶けずにフラスコの底に溜まっていた。「あっ、加熱するのを忘れてた」と気付いた学生はフラスコの加熱を始めた。
 温度が高くなるにつれて、固体が徐々に減少していく様子が見られたが、まだ少しの溶け残りがあったので、もう少し加熱することにした。しかし、最後まで溶けるどころか、むしろ固体の量が増えていってるように思えた。その時、加熱によってアンモニアが気体として溶液から追い出されていたことに気付いたが、その時には溶けていたはずの固体がほとんど析出していた。結局、最初からやり直さなければならなかったのであった。

特殊な試薬や器具を使う時は、それを使うだけの理由があります。何のためにそれを使っているのかを考えながら実験しなければなりませんよね。