実験器具は古の人たちの経験に基づいて作られたものですから、それぞれに意味があります。それは実験機器であっても同様です。
ある学生が溶媒を減圧留去しようとしていた。ナス型フラスコに溶液を入れ、ロータリーエバポレーターに取り付けて、回転させて減圧を始めた。10分ほど他の仕事をして「そろそろ濃縮が終わってるかな」と思い、エバポレータの様子を見に行くと、フラスコの中の溶媒量はほとんど変化していなかった。「どこかが詰まって減圧されてへんのかな」と思って、コックを開くとシュッという音とともに空気が取り込まれる。
原因が分からず、首を捻ってると、通りかかった先生が「受器の溶媒を捨てとかへんかったら、濃縮できひんで」と一言残して去っていった。学生が受器を触ると、冷たくなり、空気中の水分が凝縮していた。学生は常圧に戻し、受器の溶媒を棄てた後、濃縮を再開したのであった。
エバポレータ内で気化した溶媒の蒸気は冷却管で冷やされて凝縮し、液化した溶媒が受器に溜まります。受器内の溶媒が気化しやすいものだったら、周りから気化熱を奪いながら、先に気化をします。その場合、受器内の溶媒が全てなくならないとフラスコ内の濃縮が始まらないのは当然ですよね。