滲み


 実験をするにあたり、実験ノートは非常に重要です。実験ノートに詳しく記録している人の方が、研究を効率良く進められているように思います。

 ある学生は綺麗な実験ノートが好きであった。フラスコや試薬の量も別に用意した小さいノートに記しておき、あとから実験ノートに書き写すというやり方をしていた。ある日、抽出作業をしようとして、溶媒の瓶に手を伸ばしたところ、手が滑って瓶を倒してしまった。慌てて起き上がらせたものの、実験台の上には溶媒が広がっていた。学生は慌てて溶媒を拭き取り、何事もなく片付けを終えたように思えた。その時、メモをしているノートも溶媒に浸ったことを思い出した。
 不安な気持ちでノートを開くと、ボールペンで書いた文字が滲んでしまい、その多くは判読できないような状態になっていた。「まだ実験ノートに書き写してないものもあるのにぃ」と呟きながら、なんとか読めそうなものを選んでいたが、いくつかの実験は定量的な実験ではなく、定性的な実験になってしまったので、再度同じ実験をやり直さなければならなかったのであった。

実験ノートに関しては、研究室ごとに方針も異なります。この場合のようにメモから書き写すと、間違いの元になるから直接ノートに書くようにとか、鉛筆は消すことも可能なので、必ずインクを使って書くようにとか、言われることもあります。でも、有機溶媒に対しては、ペンのインクよりは鉛筆の方が強いので、悩ましいところですね。