フラスコは沢山あるに越したことはないですが、あり過ぎると、他の人の迷惑にならないように「空けて洗浄しなければ」という気持ちも薄れてしまい、結局器具が足りないという状況になりがちです。
ある研究室では、何人かのグループに分け、そこで器具の管理等を行なっていた。新年度を迎えるにあたり、それぞれのグループの器具の保有数を調べ、足りないところには新しい器具を配分していた。そして、与えられた数の器具で1年間を過ごすことになっていた。とはいえ、十分な数の器具が配分されるので、学生たちもそれほど不便に感じることがなかった。各グループが実験台の引き出しを持ち寄って、器具の数を調べて調整する様子を眺めていた、グループ最年長の学生が「何もせんと見てるだけやったら悪いから、私も手伝うわ」と言った。後輩の学生は「いやいや、自分らでやりますよ」と答えたが、先輩は「今、実験の隙間時間やから構わんよ」と言うてナス型フラスコが入った引き出しを持って実験台に戻そうとした。
その時、入れ損ねて引き出しを床に落としてしまった。その衝撃で数十個あったフラスコの約半数が割れてしまう大事故である。先輩は「ごめ~ん、やっぱり足手まといになるからやめとくわ」という言葉を残して去っていった。残った後輩達は「そやから自分らでやると言うたのに」とため息をつきながら、割れたフラスコの整理を始めたのであった。少ない器具で過ごさなければならない1年間に思いをはせながら。
同じ実験をしていても、傷が付いたガラス器具を使うよりも、新しい器具を使った方がうまくいきそうな気分になってしまいます。配分されながら使われることなく割れたフラスコは言わば不戦敗したようなものです。後輩学生たちのテンションが目一杯下がったのも仕方がありませんよね。