初めての反応を仕込む時には、最初は小さめのスケールで反応した後、うまくいけばスケールアップします。しかし、経験値が少ない人にとっては、小さめのスケールの感覚が分からず、難しい問題です。
ある4年生が原料合成を仕込んでいた。文献を見ながら、比例計算して反応を行なってみたが、目的の生成物は全く得られなかった。使っている試薬が25 mLで2万円と高いものだったので、おいそれと失敗をすることができない。そこで、学生はさらにスケールを小さくして反応を仕込んだが、やはり生成物は得られなかった。
行き詰まった学生は、先生のところに相談に行った。「混ぜて炊くだけやのに、なんで失敗するん?」と尋ねられた学生は「それが分からないから、小スケールで反応をしてるんですけど」「文献には10 mL使うと書いてあるけど、どれ位使うたん?」「10 μLです。」「そら、あかんわ。加熱してる間に蒸発する分もあるやろし、反応してても生成物を捕まえられへんで。」その後、学生は反応を仕込み直したのであった。
実験には失敗はつきものですが、失敗のしようがない実験で失敗すると、繰り返さないようにと臆病になり、さらに失敗をしてしまうという悪循環に陥ることがあります。時には思い切りが大事なんですけれどもね。