似たような実験をしていますと、似たようなサンプルが大量にできてしまいます。フラスコでしたら、ラベルを貼ったり、マジックで実験番号を書いたりすることができますが、NMRのサンプルの場合、それをすることができません。
ある学生はNMRの試料を区別するために、キャップの色を変えていた。5種類の色のキャップを用い、測定も実験番号の小さい方から赤ー青ー黄ー桃ー緑の順で測定することにしていた。ある日NMRサンプルを調製しようとした際、青味がかったサンプルと鮮やかな赤色のサンプルがあった。コーディネートしたいと思った学生は青と赤のキャップを入れ替えた。
キャップを入れ替えたからといって、測定の順番を間違えるというようなヘマをするはずもない。測定してみると、いずれも良好な結果が得られており、気分良く実験室に戻ってきた。このままサンプルを捨てるのはもったいないので、それぞれの反応混合物の入ったフラスコに戻し始めた。習慣とは恐ろしいもので、無意識に実験番号の順番に従って戻してしまった。「あっ」と気づいた頃には、時すでに遅く、2つの単品に近かった試料は単なる混合物になったのであった。
いつも同じ手順で実験している場合、特別な理由がない限り変えない方がいいですよね。無意識についつい体が動いてしまうことがありますので。