カラムクロマトグラフィーという実験操作は時間がかかります。展開、フラクションのチェック、濃縮の段階がありますが、時間が最もかかるのは最後の濃縮の段階ではないでしょうか。
ある学生は焦っていた。論文に記載する化合物データに対して、レフェリーから「不純物が多いので生成し直すように」とのクレームがついたからである。再投稿の期限までの間に、いくつかの化合物を精製する必要があり、まさにスクランブル状態である。そこで、実験台には2本のカラムを立て、2つの精製を同時に行なうことにした。両方とも展開と目的の化合物が含まれているチェックも終えた。それぞれのカラムでは分離の困難な異性体も一部一緒に溶出しているものの、化合物データを集めるには十分な純度のものが単離できそうであった。
濃縮の段階であるが、学生はここでも2台のロータリーエバポレータを用いて濃縮することにした。こちらも順調に進み、あといくつかのフラクションを加えて濃縮すれば終了という段階になっていた。気の緩みがあったのか、濃縮した試料が入っているナス型フラスコに、別のカラムから出てきたフラクションを混ぜてしまった。そのことに気づいたものの、どうすることもできず、新たにカラムクロマトグラフィーでそれらを分離しなければならなかったのであった。
この学生のように締め切りに追われて実験しなければならないことがあります。そのような場合は焦る気持ちを抑えて、普段以上に慎重に実験をしなければなりませんよね。