確認


 試薬は固体や液体の形状のものだけでなく、気体の場合もあります。そのような時に活躍するのが風船です。

 ある学生はある化合物の水素添加を行なっていた。容易に進行する反応なので、加圧条件は必要としない理想的な反応である。フラスコに試薬と溶媒と触媒を加えた後、フラスコの口にセプタムラバーを取り付けた。そこに水素ガスで膨らませた風船を付けて輪ゴムできっちり留めた注射針を刺すだけで実験装置が完成である。室温で撹拌して帰宅の途についた。翌朝、装置の様子を見ると、パンパンに膨らんでいた風船がシナっと垂れ下がっていた。その様子を見て、ふと不安がよぎった。どこかに隙間が空いていてガスが漏れたのではないか、あるいは水素が足りてなくて反応が中途半端で終わっていないか。そこで、垂れ下がっている風船を軽く押してみたところ、反応溶液にある針の先端から泡がプクプクと出る様子が見られたので、どちらの不安も払拭されて安堵した。
 学生が反応の後処理をしようと風船を外したところ、注射針を通じてフラスコ内の反応溶液が噴水のように噴き出した。確認のために風船から水素ガスを吹き込んだために、反応容器内が若干加圧になっていたのである。フラスコの周辺に飛び散った反応溶液を見て、「収率が出せんようになってしもた」と呟き、後始末と実験のやり直しの準備を始めたのであった。

気体を扱う際は、常に加圧ならないかどうかを注意する必要があります。密閉系で実験をする際は特に気をつけなけなければなりませんね。