実験をやっていますと、高い収率が得られた時は嬉しいですし、それがどんどん増えていくとテンションも上がっていきます。
ある学生がNMRで反応の追跡をしていた。原料と生成物しかない系なので、積分比がそのまま原料の転化率であり生成物の収率であるという、解析が極めて楽な反応であった。室温で一定時間撹拌し、濃縮してNMRを測定し、再度溶媒を加えて室温で撹拌するという操作を繰り返していた。反応時間が長くなるにつれて収率も順調に増加していたが、その仕方がカーブを描くのではなく、歪な増え方をしていることが気にはなっていた。
同じように操作をしようとした時、溶媒を多めに加え過ぎてしまった。学生は慌てて濃縮し、念のためにとNMRを測定すると、驚くことに収率が向上していた。学生は「もしや」と思って、再度溶媒を加えて濃縮したところ、さらに収率が向上していた。どうやら室温では反応がほとんど進行しておらず、濃縮する際の加熱によって進行していたようである。結局、最初から加熱したところ、反応は短時間で完結したのであった。
濃縮する際には湯浴で加熱します。しかし、場合によってはその加熱によって反応が進行することがあります。室温の反応をしている時は、濃縮の温度が影響することもありますので、ご注意を。