過多


 教科書を見ていますと、反応が定量的に進行して副生成物が得られないように思われますが、実際には副反応が進行したりするものです。

 ある学生がGrignard試薬を用いた反応を仕込もうとしていた。しかし、ハロゲン化アルキルにマグネシウムを作用させてGrignard試薬を調製しても、完全にマグネシウムがなくなる訳ではなく、どの程度の量を使えば良いのかを悩んでいた。そこで、先生に相談したところ、「50倍の量で調製して、そこから50分の1の溶液を注射器で取れば、誤差が少なくなるで」と教えてくれた。学生はアドバイスに従って実験し、目的の化合物を無事に得ることができた。
 その学生が卒業してからしばらくした頃、先生は学生の結果を論文にまとめようとしていた。学生の実験報告書を見ると、「基質に対して、Grignard試薬を50当量使用した」という記述があった。「もしかして」と思って、試薬の量を見ると間違えてはいなかった。学生はすでにいなくなっているので、実験をやり直すこともできない。仕方がないので、論文には「50当量使用した」と書いて投稿したのであった。

先生が丁寧に説明していても、話半分でしか聞いていない(あるいは、相槌を打っていても理解していない)学生がいます。先生はちゃんと伝わっているかどうかを確認しなければなりませんよね。