年度の変わり目は新しく来る人が居る一方で、去っていく人もいます。その入れ替わりの時期は落ち着かないものですが、最も慌ただしくしているのは、当事者たちでしょう。
ある先生が長年勤めていた大学で定年を迎えた。化学と生物の境界領域的な研究をしてきたが、なんとか定年まで乗り切ったという感じでホッとしていた。大学で使用していた荷物も取り敢えず、親が住んでいた実家に送っていたが、少し時間の余裕ができたので、荷解きをすることにした。研究ノートやガラス器具などを箱から取り出しているうちに、「ヒ素」と書いている小瓶が現れた。試薬類は退職する前に処分したはずであったが、荷物に紛れ込んでいて気付かなかったようである。ただ、出てきた試薬が毒性の高いヒ素であることが問題である。こんなものが自宅にあると、何か事件があった時に真っ先に疑われかねない。先生は慌てて近くの警察署に行って、こんな試薬を持っていますと自首をした。しかし、困ったのは警察も同様である。警察官は、「大学に言って処分をしてもらって下さい」と先生に帰ってもらった。
先生は勤務していた大学に電話をして事情を話したが、「いくら以前に勤めていて、その時に購入した試薬であっても、今は大学とは無関係の方なので、大学では処分をしかねます。」との返事であった。考えてみれば、3月までに処理をする機会があったのに、しなかったのは自分のミスであり、大学には何の責任もない。仕方がないので、業者に連絡して試薬の処理をせざるを得なかったが、相当な金額のお金を払った。先生は、これも授業料だと諦めたのであった。
大学で試薬類を扱っていますと、それが日常風景になってしまい、違和感を感じることがありません。しかし、世間一般では試薬類を持っている人が極めて稀ですので、試薬の管理と廃棄はしっかりとやらなければなりませんね。