化合物が沸騰する温度を沸点と言いますが、その値の大小を決める要因は2つあります。すなわち、分子量と分子間力です。
ある学生が原料合成をしていた。長い日数を要しながら苦労してカルボン酸をようやく合成することに成功した。あとはエステル化するだけである。通常のエステル化のようにエタノール中で硫酸触媒を加えて加熱した。その反応溶液を水にあけると、エタノールは水に溶け、エステル化した生成物が水の上に浮いていた。分液漏斗で有機溶媒で抽出、乾燥というお決まりの操作を順調に終えて、学生はとても気分の良い状態であった。
抽出した有機層をナス型フラスコに移して、エバポレータにセットして濃縮を始めた。苦労して合成したカルボン酸はそこそこの量があったので、エステルもそれなりの量が得られると期待して、溶媒が減っていく様子を観察していた。溶媒は順調に減っていき、フラスコの中には何も残らなかった。その様子を見て学生は焦った。そして、文献を見直してみると、エステルの沸点はかなり低く、溶媒と一緒になくなっていたことを知ったのであった。
カルボン酸は水素結合をしていますので、沸点は高いのですが、エステルは水素結合がなくなるために、分子量が増えるにも拘らず沸点は低くなってしまいます。自分の扱う化合物の物性はきっちり調べておくべきですよね。