「羹に懲りて膾を吹く(あつものにこりてなますをふく)」という言葉がありますが、これは一度熱いものを食べて口が火傷をしそうになり、冷たいものでもふうふうと吹きながら食べるという意味です。
ある学生が原料合成をしていた。原料は空気中の湿気で分解しやすいので、その純度確認は必要である。調製したばかりの原料を重クロロホルムを用いてNMRを測定したところ、不純物のシグナルの方が大きく観察された。きれいな結晶で純度が高いと思っていただけにショックであった。失意の下、先生のところに相談に行くと、「重DMSOで測定してみたらどない」と言われた。先生に言われた通り、DMSOで測定してみると、そこにはきれいな原料のシグナルが見られた。原料がクロロホルムに溶けにくいために、不純物ばかりが目立っていたということを理解したのであった。
それからというものの、学生は重クロロホルムで十分に溶けるような化合物であっても、重DMSOを用いて測定するようになったそうである。
重クロロホルムが使えるのならば、経済的にも試料の回収のしやすさの面でも、使った方がいいでしょうね。