開ける


 普段から実験室で使っている言葉は、詳しく説明しなくても意味が通じます。しかし、初心者にとっては、理解できないことも多々あります。

 学生実験で、ある学生が分液漏斗を用いた抽出を行なおうとしていた。分液漏斗を使うのはこれが初めてである。目的物が溶解している水溶液を加え、そこに抽出用の有機溶媒を加えて、激しく振った。その後、静置していると、当然のことではあるが2層に分離した。そして、「次はコックを開けて下の層を取り出すんやな」と周りの学生に確認をしていた。
 先生が実験室を見回っていると、その学生の実験台から悲鳴が聞こえた。慌てて駆けつけてみると、実験台の上には分液漏斗内の液体がこぼれており、実験ノートなどを濡らしていた。「なんでこんなことになったんや?」と学生に訊くと、「コックを引き抜いて開けたら、こぼれました。」との返事。先生は返す言葉を失ったのであった。

通常、「コックを開ける」と言えば、回して開けますが、初めて触る学生にはそれが通じていなかったようです。常識で考えれば分かりそうなものですけどね。