「危険な試薬」、「毒性のある試薬」などと言いますが、その度合いは試薬によって様々です。中には、かなり危ない場合もありますので、扱う際にはご注意を。
ある学生がジメチル硫酸を使って原料合成をしていた。突如、ボコッという音とともに、反応容器から白煙が生じた。教員はそのような時のためにいるようなものである。すぐにその実験台のところへ行き、処理を終えてすぐに片付けも終了した。その日の夕方、その先生は少し鼻水が出てくるようになり、「風邪でもひいたかな」とは思ったものの、大して気にも留めなかった。そのうち、鼻水だけでなく痰も出るようになり、帰りの電車の中では微熱も出始めた。その夜、熱は38度を超え、鼻水と痰による息苦しさも相まって一睡もできなかった。ここまでくると、昼間に吸った薬品が原因であることは明白である。
翌朝、病院に行ったものの、医者もどう対処をしてよいものか、分からない。地域の救急センターに電話で問い合わせて放った一言が「昨日のうちに死んでなかったから大丈夫でしょ」であった。翌日、研究室でジメチル硫酸について調べてみると、「暴露後、7〜8時間後に発熱、鼻水、痰などの症状が現れる」という記述があり「その通り」と頷いていたのであった。
通常は、試薬を吸ったり触れたりすると、すぐに症状が現れるので、対処もできるのですが、このように数時間後に現れるものは、原因も分かりにくくなりますので対処が困難になってしまいます。試薬を使用する前にその性質を十分に把握しておかなければなりませんね。